豊かな食空間のために~空間のことあれこれ興味津々!

2012.12.15

連載 食空間

前回は、スペインにおけるイスラム建築=イスラム建築の最高峰ともいわれる'アルハンブラ宮殿'のお話をしました。         

今回は、世界で最も美しいといわれる霊廟です。           

1628年~イスラムがインドに侵攻してムガル帝国を樹立してから約100年~帝国の絶頂期に第5代皇帝シャー・ジャハーンが即位します。この皇帝の最愛の王妃ムムターズ・マハルは、36歳という若さで亡くなりました。皇帝は深く悲しみ、王妃のために世界中から最高の職人、材料を集め、イスラム様式の美しく壮大な白亜の霊廟を築きました。                          

これが、'タージ・マハル'です。                      

タージ・マハルとは、ムムターズ・マハルの名前を縮めたもので、「宮廷の冠」の意味もあります。


雄大な砂岩の正門を
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くぐると、
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そこには広大な庭園が広がり、
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その奥に、100m角の基廟があり、その上には、四隅に42mの尖塔(ミナレット)、中央は高さ約65mのドーム屋根の霊廟が建っています。
徹底的な左右対称、美しいプロポーションのこれらは、全て真っ白な大理石で作られ、気品のある姿を呈しています。
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タージ・マハルは、イスラム建築の影響を大きく受けていますが、インドの建築様式の要素もみられます。
中央の大きなドーム屋根の周りの、柱に支えられた小さなドームは「チャトリ」と呼ばれ、インドに於けるイスラム建築の特徴といえます。
4本の尖頭(ミナレット)は、本来イスラム教モスクに設けられ、人々に日に5回の礼拝を呼びかけるものです。ですから、霊廟には必要のないものですが、このミナレットがあることで、外観のバランスが美しく整って見えます。そして、このミナレットの先端にも、「チャトリ」が施されています。
また、中央のドームの先端の飾りは、蓮の花がモチーフになっているとも言われ、これはインド・仏教の影響といえます。


この建物は、遠くから見るとレースのように透けて、空に溶け込むように見えますが、
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近くでみると、白い大理石の中に貴石で施されたモザイクの柄や、大理石を彫り込んだレリーフ柄などが、繊細に施されているのがわかります。
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この上なく美しい建物を目の当りにすると、シャー・ジャハーンがどれだけ王妃を愛していたか、想像に難くありません。

しかし、このタージ・マハル建築などのために国家財政を傾けることとなり、シャー・ジャハーンは三男によって、タージ・マハルから約2km離れたアーグラ城に幽閉されてしまいます。
幽閉された城の塔からタージ・マハルを眺めることが、晩年のシャー・ジャハーンの唯一の慰めだったそうです。

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(アーグラ城からタージ・マハルを臨む)


今、シャー・ジャハーンとムムターズ・マハルは、並んでこのタージ・マハルに眠っています。


タージ・マハルは、空の色を反映し、刻々と表情を変えます。

今度訪れるなら、「是非、満月の夜に!」と心に決めました。
(普段、日の出から日没までしか開いていませんが、満月の前後5日間は、夜の時間も入場できるそうです。)

青白い月の光に照らされるタージ・マハルを見てみたい!!です。


ジャパンテーブルアーチストアカデミー卒 認定講師
テーブルアーチスト
食環境トータルプロデューサー
鈴木久美子

豊かな食空間のために~空間のことあれこれ興味津々!

2012.10.14

連載 食空間

今回は、スペイン南部のアンダルシア地方です。

この地方は8世紀から15世紀にかけてイスラムの王朝に支配され、イスラム文化が色濃く残る場所です。
                              

イスラム教は、570年頃メッカに生まれたムハンマドが、神の啓示を受け布教活動を始めたものです。622年(イスラム歴元年)メディナに移住したムハンマドが築いた '預言者の家' は、住居であり、礼拝の場であると同時に、学校や病院でもあり、貧しい信者達の生活の場でした。後にムハンマドが葬られ参拝の場となり、この建物は、その後各地に作られたモスクの原型となりました。

ムスリムの成人男性は、金曜日の昼に集団礼拝を行います。大人数が集う大きなモスクでは、大空間を確保するために、無数の柱とアーチで構成される'多柱式プラン'という様式が特徴となります。                                        

アンダルシア ・コルドバにある世界遺産『メスキータ』は、'多柱式プラン'の代表的な建物で、赤レンガと白大理石の2層のアーチが無数に連なっています。 A001.JPG
林立する2層のアーチ
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ミフラープ:
(モスクの奥壁に作られ、メッカの方向を示し
礼拝の指標となる場所)


イスラム建築は、用途によって、宗教建築と世俗建築に大別されます。
宗教建築の代表は上記のモスクですが、世俗建築の代表としては、宮殿があげられます。  
                              

そして、その中でも最も美しいと称されるのが、アンダルシア・グラナダにある『アルハンブラ宮殿』です。

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城塞として、宮殿の他、モスク、官庁、学校、浴場、庭園など様々な施設を備えていました。

宮殿は、伝統的なイスラムの邸宅の様に、2つの中庭を中心に構成されています。
一つは公式行事等のための公的謁見に、もう一つは王族や家臣との私的謁見に対応するように、中庭を核とした空間が割り当てられていました。
                              

前者の中庭空間は、'ミルトルのパティオ'と呼ばれています。
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後者は、有名な'獅子のパティオ'です。

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中央にある12頭の獅子に支えられた水盤から、十字に設けられた水路を通って、四方を囲む部屋内に水が涼しげに流れています。
イスラムの支配する地域は砂漠地帯が多く、その中で水を巧みに演出することは、大変贅沢なことでした。この宮殿に於いても、水が巧みに取り入れられています。
                              
イスラム建築の美しさは、装飾にあります。
                              

イスラム教では偶像崇拝を禁じています。人間や動物を描くことも非難の対象となりました。
西欧諸国では室内に絵等を飾るところ、イスラム諸国ではその代わりに人間や動物を用いない装飾が発達してきたのです。
代表的なモチーフは、

  1. アラベスクと呼ばれる'植物文様
  2. 数学の発達に付随した'幾何学模様
  3. コーランを記述する神聖なアラビア語を図案化した'文字文様
                             アルハンブラ宮殿も、素晴らしい装飾でいっぱいです。 A006.JPG
アラベスク文様 (漆喰壁のレリーフ)
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幾何学模様 (タイルの壁)
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文字文様と幾何学文様の組み合わせ (漆喰壁のレリーフ)
                                                             

このような文様を組み合わせ、繊細で美しい建物が作り上げられています。

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床から天井まで覆い尽くす装飾

                              

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イスラム建築の特徴の'アーチ':様々な形がある。


                              

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幾何学を無数に組み合わせて作り上げる
'ムカルナス(鍾乳洞)'と呼ばれる天井ドーム
                                                         どこをとってもエキゾチックで、息を呑むほど美しい建物です。                                                                                      日本人の私たちにとってあまり馴染みがなく、異文化の極致ともいえるイスラム文化ですが、建築、照明器具、カーペット、装飾品、雑貨...等々、魅力的なものがいっぱいです。 もっともっと、知っていきたい文化です。                                                                                               
ジャパンテーブルアーチストアカデミー卒 認定講師
テーブルアーチスト
食環境トータルプロデューサー
鈴木久美子

豊かな食空間のために~空間のことあれこれ興味津々!

2012.06.13

連載 食空間

今回も前回に続き、スペイン/バルセロナ。ガウディ作品のお話です。


バルセロナ・アシャンプラ地区、その中心街であるグラシア通りでは、ガウディをはじめとしたモデルニスモ(スペイン・カタルーニャ地方版アールヌーボー)の建物をたくさん見ることができます。


その中から、世界遺産でもあるガウディの作品を2つ。


≪カサ・バトリョ≫
ジュゼップ・バトリョ・カサノバスの依頼で改修した邸宅です。
1階は事務所、2階はバトリョ家の住居、3階から上は賃貸のアパートにあてられています。


建物の中央は吹き抜け=光庭となっており、タイルで仕上げられています。
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1階のタイルは白や灰色で、表通りからの光を暗い部分へ反射させる役目を果たしています。
上に登るにつれ、タイルの色は淡い青→濃い青と変化し、天窓からの強い光をなじませています。

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また、吹き抜けに面する窓は、下層階にいくにつれ大きくなり、差し込む光を有効に取り入れることができるようになっています。                                          


アパート部分は居住者がいるため、2階のバトリョ邸と屋上部分の見学ができます。        

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バトリョ邸のサロン
躍動感の感じられる内部空間です。色ガラスがはめ込まれた間仕切りや窓も、うねるような形をしています。                                                       BA608.JPG
サロンの天井照明
天井は、柔らかな曲面を描く壁面から滑らかにつづき、中央の照明器具へ向かって渦巻いていきます。                                                          


屋上では、モザイクタイルで色彩豊かにに彩られた煙突や排気筒が、あたかも建物から生えているような光景が見られます。
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≪カサ・ミラ≫
上記カサ・バトリョに続いて建てられたのがカサ・ミラで、ペドロ・ミラ・イ・カムプス、ロザリオ・セヒモン夫妻の邸宅です。
1階は夫妻の住居、2階から上は賃貸アパートにあてられています。                  


この建物も、2つの中庭を囲むように建てられ、各住戸に光が届くようになっています。

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住戸のバルコニーにも小さく見えると思いますが、この建物では、バルコニーや階段の手すり、外と内を区切るグリル扉など、ロートアイアン(鍛鉄)で芸術的な形に作り上げられています。    

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外に面したグリル扉
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中庭の階段手すり
                        


地中海をイメージしているとも言われており、海藻や珊瑚のように、海や風が作り出したようにも見える形。ガウディと鍛鉄職人のお互いの理解があってこそ生まれた作品といえると思います。


この建物にも居住者がいるので、見学できるのは、屋上、最上階と最上階の1つ下の階。
屋上に上ってみると、波打つような形状の屋根に立ち並ぶ煙突や換気塔。ローマ時代の戦士の兜の形という、不思議な光景が見られます。
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バルセロナは、これ以外にもいくつかのガウディ建築が見ることができます。
ピカソやミロの美術館もあり...
そして、サッカーも観戦できるし!食べ物もおいしい!!

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バルセロナ郊外にあるミシュラン2つ星レストラン・サンパウ
でいただいたデザート
                      


また、ゆっくり訪ねてみたい街の一つです。                                  

ジャパンテーブルアーチストアカデミー卒 認定講師
テーブルアーチスト
食環境トータルプロデューサー
鈴木久美子

豊かな食空間のために~空間のことあれこれ興味津々!

2012.04.09

連載 食空間

今回は、スペイン/バルセロナへ行った際に立ち寄った、サグラダ・ファミリアのお話をしてみたいと思います。


1882年の着工以来、今もなお建設が続いている、言わずと知れた、アントニ・ガウディの代表作です。
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「自然が僕の先生だ」という言葉の通り、ガウディは、様々な自然からインスピレーションを受けて、設計をしています。
この建物のモチーフも、バルセロナの北西60㎞にある聖なる山:'モンセラート'といわれています。
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この聖堂の東西南のそれぞれの入り口面は、
東面 : 生誕のファサード(キリストの誕生)
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西面 : 受難のファサード(キリストの受難)
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南面 : 栄光のファサード(人類の歴史とキリストの教え)
(南面は建設予定)


と、それぞれテーマがあり、'石に刻んだ聖書'とも言われています。


この3面には、それぞれ4本の高さ98m~120mの塔があり、この計12本の塔は、12使徒を表していると言われています。


さらに、建物の中心となる塔には十字架を掲げられ、キリストを表し、最終的に高さ170mになる予定です。

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(完成予想図)

聖堂内に入ると、「神への畏敬」「自然の崇拝」から、ガウディ自身'神の森'を造りたかったというように、上部が枝分かれした樹木のような柱が立ち並びます。
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このように枝分かれの状態で天井を支えることによって、柱の数を減らすことができ、広々とした空間を作り出せます。
ガウディが考え出した構造の一つです。


さらに、天井アーチの形を、カテナリー曲線(ネックレスのように、重力のままに垂れ下がる曲線)にすることで、アーチ下部の線が垂直線に近づき、スムーズに柱に力が伝わると考え、実験をし、天井の形に取り入れています。

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実験でロープを吊り下げたもの
(これを逆さまにした形が、聖堂のドームの形になっている)


ところで、さきほどお話しした聖堂の塔。
実は、内部が'鐘楼'になっています。
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塔には無数の窓が開いており、それぞれに下向きのひさしがあることで、
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音が街に降り注ぐように造られています。                                   


生誕のファサードでは'巨大なピアノ'、受難のファサードでは'パイプオルガン'、栄光のファサードでは'打楽器'の音が鳴るように、
ガウディ―は、音響の研究もしながら、聖堂内でそれらを演奏することを夢見ていたそうです。


サグラダ・ファミリアは、大きなひとつの楽器である、ともいえます。


2026年に完成したあかつきには、是非、バルセロナの街に降り注ぐ神聖な音楽を聴いてみたい!!と思いませんか?                                            

ジャパンテーブルアーチストアカデミー卒 認定講師
テーブルアーチスト
食環境トータルプロデューサー
鈴木久美子

豊かな食空間のために~空間のことあれこれ興味津々!

2012.03.03

連載 食空間

今年の冬は、とてもとても寒い毎日でした。
3月に入り、ようやく、春がすぐそこまでやってきています!
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日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米で'春'といえば、
'イースター'。
十字架に架けられたキリストが数日後に復活した、その復活を祝う祭りです。


北方神話の春の女神「Eostre」に由来すると言われています。
本来はキリスト教とは関係のない異教徒の春の祭りでしたが、
寒さ厳しい冬から、生命の息づく春へと移り変わる様が、十字架に架けられた後に復活したとされるキリストのイメージと重なり、
キリスト教の布教と共に普及したと言われています。


イースターの日付は毎年変わります。
「春分後の最初の満月から数えて最初の日曜日」、
具体的には、3月21日から4月24日の間になります。


イースターの前後には、長期間にわたる特別の期間があります。
イースター前の40日間とイースター以後の50日間、合わせて90日間がそれ。

聖書によれば、キリストは40日もの長い期間、断食して荒野をさまようという修行をしましたが、この修行に習って、イースター前の40日間を「レント」と言い、肉、卵、油、乳製品などを控えて、食事を節制し、結婚式などのお祝い事も避けたりします。

「レント」の前に肉を食べて楽しく羽をのばすという、主にカトリック教国の行事が、カーニバルです。
'リオのカーニバル'などが有名ですね。


イギリスではレントの前日を'パンケーキ・デー'と呼び、レントの間節制する卵や油をたっぷり使ってパンケーキを焼いて食べます。

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さて、イースターと言えば'イースターエッグ'。
伝統的に、生命や復活の象徴として、卵が使われてきたのではないかと言われています。

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卵は、'イースターうさぎ'が運んできたとされ、子だくさんのうさぎは、繁栄・多産のシンボルと言われています。

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カラフルなペイントなどで卵を彩って家に飾ったり、
庭に卵を隠して子どもに探させる'エッグハント'、
丘の上から卵を転がす'エッグロール'、
卵をスプーンにのせ、落として割らないように気をつけながら、誰が一番にゴールするかを競う 'エッグレース'、
などで楽しみます。

家族でゆで卵を食べたり、家族や友人など親しい人と卵やウサギの形のチョコレートや、中にプレゼントを入れたチョコレートの卵を交換し合ったりする風習もあります。


この時期、フィレンツェを旅したら、
街中のショーウインドーが、ウサギや卵の可愛らしい飾り付けで溢れていました。
(ちなみに、イタリアでは'イースター'のことを、'パスクァ'と言うそうです。)

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ニワトリが卵型の車を引いています!


135.JPGのサムネール画像

アイスクリーム屋さんの飾り付け
ピンクの巣の中に、卵と共にカラフルなアイスクリームが...

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あひる(ひよこ?)のチョコレートがかわいい!

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ウサギがいっぱい、こっちを見ています...


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高級菓子店では、ウディングのような上品な飾り付けでした。


クリスマスの時期も楽しいけれど、この時期ヨーロッパを旅行したら、是非、ショーウインドーを覗いてみて下さい!
きっと、楽しい飾り付けに出会えると思います.


今年のイースターは、4月8日。
卵型のチョコレートなどで、ちょっと楽しんでみませんか!

ジャパンテーブルアーチストアカデミー卒 認定講師
テーブルアーチスト
食環境トータルプロデューサー
鈴木久美子

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